SAN “Bird watching from the beach”

画家の椎木彩子さんとの、早朝の逗子海岸での散歩をきっかけに生まれた本作は、私たちが時折集まって自主制作するユニット「SAN」としての活動の一環です。今回は、彼女が海岸で拾い集めた石や貝殻、陶器の破片、海藻など──自然物と人工物の欠片をもとに描いた鳥たちを収録した、小さな鳥図鑑を制作しました。 本の佇まいや雰囲気、ページ構成のリズム、印刷方法、紙の質感や色味、添える言葉に至るまで、デザインと絵が心地よく共存し、この作品の趣旨がまっすぐ伝わることを目指して、何度も二人で話し合いながら丁寧に作り込んでいきました。 巻末には、早朝の逗子海岸の風景を収めたページがあり、そこには鳥たちの姿のもととなった欠片が散りばめられています。それぞれの鳥と欠片を照らし合わせてみたり、羽の模様から欠片を想像してみたり、あるいは一つひとつの欠片がもつ記憶に思いを巡らせてみたりと、自由な発想で眺めて楽しめる、そんな“余白”のある作品集になっています。 仕事に行き詰まると、私はよく椎木さんに会いに行きます。お茶を飲んだり、散歩をしたりしながら、何かを教わるように過ごすその時間の中で、また次の作品が自然と生まれてくる。そんなリズムと関係性の中で、これからも一緒に制作を続けていけたらと思っています。